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 ビハインド・ザ・カンバス 2002年11月04日

 カンバスの後ろ側: マーク・テディーン
 約10年来のカード絵師

 トビー・ヴァクター

 私がこのコラムを書くようになって、マジック世界のためのビジュアルを創る人々とコミュニケーションを持つ機会を満喫している。
  古株のプレイヤーとして初めてリバイズドのスターターを手にしたのはもう8年も前のことだ。私はゲームをしはじめて、印象的な作品を作り出したアーティストたちに是非ともインタビューしたいと思っていた。
  不幸にも、ゲームのためだけにカードの絵を描いている保守的なマジック・アーティストは希少種だ。そういうわけでそれ以上説明するまでもなく、シドニーで行われた世界選手権でマーク・テディーンにインタビューする好機に飛びついたわけだ。

  マークは最初からゲームとともにあり、古くは《Juzam Djinn(AN)》や《奈落の王/Lord of the Pit(4E)》と同じように新しいものでは、《ファイレクシアの巨像/Phyrexian Colossus(7E)》や《切除するもの/Scalpelexis(JU)》といった印象的な作品の後ろにいる人物なのだ。
  これは特別なインタビューであり、私は書き方を少々変えて、テープを再生してマークの言ったことを書き写すことにした。


 ヴァクター:何が最初にあなたを芸術に引き込んだのですか?
 テディーン:兄貴のクリストファだろうなー。彼は俺より3歳年上で、絵を描いててさ。そんで俺はこう思ったのさ「うひょー、こいつぁマジスゲーや!俺もこんなふうに描きてぇ!」 
  んで、俺も自分から同じように絵を描くようになったんだ。兄貴もアーティストでね、彼はイリノイでCGを教えてる。同じ理由で、俺たちは芸術の道へ進んだんだ。さもなきゃ、同じように俺がもうちょっとガキだったら宇宙飛行士になりたいと思っただろうなぁ…



 ヴァクター:私が話を聞いたことのあるアーティストたちの何人かは、「自分はスター・ウォーズを見て、宇宙飛行士になりたかった」ということを仰ってましたが。(訳注:マット・ウィルソン氏もそんなことを言ってました)
 テディーン:そうだねー。実際俺も昔はスター・ウォーズだったな。
  俺の先生は宇宙の風景の写真ばっかり見せてくれたから、当然俺も毎日宇宙船を描いてたんだ。テレビで宇宙船が出れば絶対見てたしね。でもすぐに、宇宙船を飛ばしたいと思うかわりに、宇宙船をたくさん描くようになった。モンスターと宇宙船をね。



 ヴァクター:どういう点でこの仕事が自分の経歴を作ることができると実感したんですか?
 テディーン:聞いてくれよ。俺が18歳で大学生の頃はさ、マンガや時々そのテのイラストを描いてたから、漫画家になろうかなあって思ってたんだ。
  でも大学を卒業したとき、俺の親友であるトコロのアンソン・マドックスがウィザーズ・オブ・ザ・コーストって会社のことを教えてくれたのさ。
  あいつの友達がウィザーズでアート・ディレクターをしてて。その時はまだあいつらは学生だったんだけどな。で、ロールプレイングゲームのイラストを描かせるための人間を集めていたんだ。俺はセントルイスの大学院を卒業したばかりだったから、シアトルに腰を落ち着けることを決心したってわけ。
  そんときから、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト製のモノをホントにたくさん描いてきてるよ。マジックのゲームは6ヶ月後に発売されたんだ。



 ヴァクター:わお、それじゃあそれがあなたの初公演だったわけですね?あなたは学生からいきなりプロフェッショナルになったということですね。ウィザーズがその足がかりだと。
 テディーン:基本的にはそうだなー。ウィザーズのためにいくつかロールプレイングゲームをやってたこともある。タリスランタっていうゲームで、最初の作品のひとつさ−−−数年後マジックの仕事が雪ダルマ式にでかくなった途端にそいつは売り払ったよ。
  だからマジックと同時期にしばらくそれをやってたことになる。マジックがだいたい92年の終わりから93年の初めごろにとりかかって、それが最初にアートワークを作り始めた時だな。次の秋のジェネコンのためにそれを準備していたんだ。それが出発点だな。



 ヴァクター:どこかに美術の勉強をしに行きましたか? それが助けになりましたか? もしそうなら、どのような方法をとったのですか?
 テディーン:ああ、確かに。俺はスポーケインのゴンザガ大学の在学生学校に4年通ってた。本当にいい美術の授業だったけど、一般教養もあってさ、ぜんぶ美術だけじゃなかったんだ。
  俺たちは歴史と哲学を持っていて、それが一般的な美術のモノすべてを刺激的なものにするんだ。なぜなら、君が自分の絵について何も語ることがないのなら、それは無意味なものだってことになるんだ。
  それから俺はセントルイスのワシントン大学の大学院で2年間、絵画に集中した。だいたいこれくらいの4フィート四方の油絵を描いてた。
  今は、シアトルに来てからはってことだけど、もちろんマジックの絵はホントに小さくなった。その当時の電気スキャナはここまででかくなかったし、スキャナがそんなにたくさんのピクセルを処理できなかったから、俺たちは絵を小さく描かなきゃならなかったんだ。



 ヴァクター:あなた自身のスタイルをどう言い表しますか?
 テディーン:さあね。何年もかけて変わったからな。特に大きめの作品でビットの焦点を上げようとはするけど、すこしばかり印象派っぽいんじゃないのかな。
  ああでも、マジックのための作品ってもともとかなり小さいんだし、俺がいいかげんな描き方をしてたんなら実際にはその作品はもっとうまくいってるのかもしれないな。
  最終的には、それに焦点が当たってるように見えるまで重ねに重ねるんだけども。そいつが本当にそうあるモノよりもっと細かなものがあるように見せるんだ。もっと大きいブックカバーのようなやつに対しては、焦点に当てるものがいるし仕事もキッチリしないといけないんだけどな。



 テディーン氏のデュエリスト誌のための《Juzam Djinn(AN)》の再解釈である。オリジナルのカードは比較用に示されている。

 ヴァクター:雑誌のカバーですよね。
 テディーン:うん。デュエリスト誌の表紙だね。実際はモトのやつよりもっとくっきり描いた《Juzam Djinn(AN)》を使ってデュエリスト誌の宣伝をしたんだ。描き直しができたのは本当に嬉しかったね。


 ヴァクター:ファンタジー・アートを描くことについて何が好きですか?
 テディーン:んぎー。そりゃ広義の質問だな。俺がいちばん長い時間をかけてそれをやってきたってことと、それしかできることがないってことだと思うんだ。
  大学院にいても俺は宇宙船やモンスターの絵をスケブに描いてたから、俺がたいてい同じことをしてるもんだから教授たちは全員いらいらしてたよ。わかんないけど… たぶん能力が別の世界に行くことができないんだな。言わばちょっとした現実逃避家ってところかな。



 ヴァクター:マジックのための絵を描くことについて、特に好きなものはありますか?
 テディーン:ファンタジーが少し混ざったもので、でもそんなにトールキンばりじゃないやつかなあ。そういうのって30年も昔からやられてきてるじゃん。ファンタジー・アートが特定の型にはまったように見えちゃう。
  マジックのそれはちょっとだけ制限がないんだよな。あれはちょっとサイエンス・フィクションよりで、でもちょっとテクノロジーはジュール・ヴェルヌ萌えなところもあるし。そういうのがめっちゃ面白いんだ。斬ったはったの暗ーいモノに結びつけなくてもいいんだよな。



 ヴァクター:陳腐なドラゴンと魔法使いモノですね。
 テディーン:うんうん。ドラゴン&ドワーフってやつは俺の好きなジャンルじゃないしな。


 ヴァクター:あなたが手がけたものにはほとんど見かけませんね、実際。 マジックのために絵を描くやりかたに、最初のころと何か違いはありますか?
 テディーン:んー、絵の大きさ上は…もともとのアート解説はもっと制限がなかったんだ。ストーリーラインもなかったし、詰め込まれた機能がそんなにたくさんの解説を必要としなかった。
  それで、俺たちは基本的にカードのタイトルをもらって、そこで自分なりの解釈を思いつくってことをやってた。《奈落の王/Lord of the Pit(4E)》のアート解説名は単に「バルログ(下注参照)」でね、それが実用的なタイトルだったんだ。だから暗いイメージと俺が思い描くバルログの外見を考え付くのは簡単だった。でも、バルログは当然使えないから最終工程でそいつは《奈落の王/Lord of the Pit(4E)》に改名されたのさ。

 (注)J・R・トールキン著「指輪物語」に登場する炎のムチをふるう悪魔。お強い。2002年から2004年に三部作として映画化された。


 ヴァクター:8、9年経ったわけですが、昔と今を比べてどうですか?
 テディーン:カードに一貫したストーリーラインがもっと多くなったな。それは問題ないんだ。実際、俺がスタッフの中のスタイルガイド・アーティストの一員として働いてたときは、俺にとって、仕事を進めてたくさんのデザインをするのは楽なもんだった。もちろん、俺のデザインを説明するのもね。
  若干のカードはまだ制限を受けないものも割り当てられてるから解釈にもかなり余裕があるけど、ときにはアートワークはアート解説によって非常に特殊になっちゃうだろうね。
  とても遠い道のりになることもある。もし誰かが君に五千人の兵士と、その全員が懐中時計をポケットに入れているというアート解説を出したとして、しかもそれをちゃんと見えるようになんとかしてくれなんてのはできっこないぜ。そういうのは来た道を戻って、どちらかといえば解釈をやり直して、別の方向の提案の準備をすべきだな。



 ヴァクター:スタイルガイド・アーティストの一員としてちょっと話して頂けますか?
 テディーン:3年半のあいだ、ジェスパー・ミルフォーズは、一緒にスタイルガイドを組み立てるためにこの俺とアンソン・マドックス、アンソニー・ウォーターズ、マット・ウィルソンを連れてきたんだ。
  ウェザーライトが始まったとき、それは適任だったんだけど、実のところウェザーライト・サーガ全部を通して目を通しているのは俺だけだった。で、カードゲームを巻き込んだある特別な物語を作った。
  そしてそれには特定のモノ、ジェラードのような登場人物のコスチューム、ラースのような環境、ウェザーライトといったアーティファクトとかについてみんなが一貫したデザインを描くことが必要だった。だから、スタイルガイドを組み立ててアーティストたちに送って、彼らは世界がどういうものなのかを知るんだ。



 ヴァクター:継続性、と。
 テディーン:そう、基本的に連続してなきゃならない。


 ヴァクター:その経験はどうでしたか?
 テディーン:ああ、もう凄かった−−−ミニムービーを作るようなもんだからね。なのに締め切りは後になればなるほど短くなるんだけどさ、最初はエキスパンションひとつにつき2ヶ月もらえるんだ。そりゃめっちゃ面白かったけどさ。


 ヴァクター:あたなが最初にこのゲームのために絵を描き始めたときは、真新しいものゆえに参照すべき先例がありませんでしたが、どうやって自分のスタイルを決定したんですか? 特別に見せたいという狙いはありましたか?
 テディーン:最初にカードの絵を描き始めたときに特別なスタイルが頭の中にあったかどうかは覚えてないなぁ。15枚かそこら描いたと思うけど;アンソンは25枚くらいだったかな。俺たちはできる限り速く絵を描きあげなきゃならなかった。
  別々のアーティストたち全員の蓄積の過程は、マジックを見たり感じたりしたものを後々皆が真似したり広げていったりできるたぐいのものを作り上げたんじゃないかと思うんだ。
  ある特定の様式の絵を作るために俺の部署が意識的に決めたことがあったかどうかは確かじゃないけど、世界そのものは非常に不明瞭だった。初期のカードの多くは自然な抽象画の部類だった。もう一度言うけどそれはバリバリの中世風ではなかったんだ。あれはサイエンス・フィクションか、少なくとも錬金術風の能力をまだ持ってるよ。



 ヴァクター:一般的に、マジックの世界を見てみて、ゲームが始まった頃と今ではどんな感想がありますか? ほぼ10年たった今と比べて何か思うところは?
 テディーン:んー。わかんないけど、ゴブリンは変わったよな。ゴブリンみたいなやつとファイレクシア人とかが確かに特定のイメージじゃなくごっちゃになってるな。どうやって比べるんだ? 俺にはわかんないよ。
  ストーリーラインは確かにマジックの見かけと感じに影響を与えたとは思う。



 ヴァクター:肯定的ですか、それとも否定的な方法でですか?
 テディーン:だいたいは肯定的だな。個人的な意見だけどな、ストーリーラインは自由をどこかで束縛しちまうからなぁ…… 俺はマジックが最初のころの絵と同じ多様性を保っているとは思わない。なぜならみんな先例で絵を描くことをわかってるから。
  そうだな、その壁を超えないとそれだけのオリジナルのアートワークがあるという結果をもたらさないと思うね。



 カードにテディーン氏のサインを入れてもらった:《火の玉/Fireball(5E)》、《切除するもの/Scalpelexis(JU)》、《精神攪乱スラル/Mindstab Thrull(5E)》

 ヴァクター:あなたが描いてきた作品の中で好きなものはなんですか? そして何故それが好きなんですか?
 テディーン:いつも言うのは《精神攪乱スラル/Mindstab Thrull(FE)》で、こいつは楽なやつだったからだな…


 ヴァクター:これには3つのバージョンがありますが、あなたはそのひとつだけを描いていますよね。
 テディーン:そうだよ。モトは「ミュータント・サボタージュ」って呼ばれてた。彼は腕に何本かの錠前外しを持ってるけど、名前を《精神攪乱スラル/Mindstab Thrull(FE)》に変えられてしまった。
  俺がはっきりとした考えを頭の中に持って、そうしたいと思うように正確にアートワークが形になったから、こいつはうまくいったほうさ。こんなことなかなかないんだぜ。もっと最近じゃあ、たぶん赤のバーバリアン(《蛮族ののけ者/Barbarian Outcast(TO)》)かな。こいつは俺がそうしたいと思った路線に近い結果になったカードの一例だな。



 ヴァクター:初めてプレイヤーが作るカードのイラストを描くアーティストに投票で選ばれたことはどうですか?
 テディーン:すごく嬉しいよ。接戦だったみたいだし、すごい競争だったな。今まででこれは凄くドキドキしたよ。
 (訳注:第一回「カードを作るのは君だ!」で、投票によって《忘れられた古霊/Forgotten Ancient(SCG)》のイラストを担当した。)


 ヴァクター:これが最初のプレイヤーが作るカードだということで余計にプレッシャーはありますか?
 テディーン:ああ、確かにね。俺はいつも他のアーティストならどう解釈するのかなと考えてるし、その中でもトップでありたい。これは競争とかじゃないけど、それを切り詰めようとは思ってない。俺はただ他のアーティストが悪い感じを持たないように、できる限りいいものを作りたいだけなんだ。


 ヴァクター:ではプレイヤーとそのほかのアーティストからプレッシャーを受けているわけですね。
 テディーン:マット・ウィルソンとマット・カヴォッタ両人との接戦だったことは知ってる。俺はこの二人が思いつくものと同じぐらい、彼らが描く絵と少なくとも同じぐらいいいものを描くだけだね。


 ヴァクター:マジック以外でどんな仕事をされているんですか?
 テディーン:たくさんのゲームのためにたくさん絵を描いてるよー。ヴァンパイア、L5R(レジェンド・オブ・ザ・ファイブリングズ)、LBS(レジェンド・オブ・ザ・バーニングサンド)、バトルテック、ネットランナー、ドゥームタウンとか。


 ヴァクター:あなたはゲームをされたことはありますか?
 テディーン:最初にゲームをしたのはかなり昔だなあ。アンソン・マドックスと俺はそのゲームの仕事や他のプロジェクトなんかをしようとしてたんだが、マジックをプレイするのだけで一日のかなりの時間を使っちまった。俺たちは仕事が全然終わらなかった。
  後になって、俺たちは間違えてプレイしていたことがわかったんだ。ルールをちゃんと読んでなかったから、15分で済むようなゲームが1時間かかっちまったんだ。



 ヴァクター:ゲームをプレイしたことで絵を描くうえでのヒントを見つけられましたか?
 テディーン:確かに。カードの機能がどのように働くかって感覚がわかるからね。防御的なカードだったら、絵をもっと中間色で描くだろうし。カードが攻撃的で対戦相手をぶちのめすものだったら、例えば10/10くらいのハイレベルなクリーチャーなら、ゼッタイそういうのは本当にデカく見えるようにしようと思うだろ。


 ヴァクター:ウェッブサイトか、何か宣伝できるものはありますか?
 テディーン:モチあたぼーよ!http://www.marktedin.com/ に来てくれよな。


 ヴァクター:今どちらにお住まいですか?差し支えなければいらっしゃるご家族のことも教えてくださいませんか?
 テディーン:いまはシアトルに住んでるよ。テランス湖の近くに妹のメアリー・パットがいる。弟のマイケルはレントンの運送会社で働いてて、兄貴のクリスはアート研究学校でCGイラストを教えてる。おふくろと親父はワシントン州のリンデンにいる。アラスカ南東から引退して引っ越してきたんだ。


 ヴァクター:そこはあなたが育ったところですか?
 テディーン:ああ、アンソンと俺は幼馴染なんだ。


 ヴァクター:そこでの生活はどうでしたか?
 テディーン:うん、サイコーだった!


 ヴァクター:それはどうして?
 テディーン:自然がたくさんあって、捻じ曲がった木が多くて、見ててスゲエものがたくさんあって。シアトルの4倍は雨が降るようなところで、家の中ですることを見つけなきゃいけない。絵を描くことはその中のひとつだったんじゃないかな。


 ヴァクター:ここからはあなたが描いた3つの作品についてお願いします。いつも私はアート解説から入って質問をしているんです「なぜあなたはこれをこう、これをこう、これをこうしたのですか?」って。でも今回はアート解説はありません。これらは古すぎますから。というわけでお願いします。



 《ネクロポーテンス/Necropotence(5E)》


 テディーン:《ネクロポーテンス/Necropotence(5E)》は、アート解説がまったくないカードのひとつで、「Necropotence」としか題されてなかった。俺はこのカードの機能を聞いたんだけど、それが助けになったかどうかわかんないな。
  俺は絵をとにかく描いて実験してみた… 強烈な死のイメージのたぐいが欲しかったんだ。結局、ドクロとその周りに装飾をつけることにしたんだ。この頭にある文様を反映した光り輝くエネルギーかなにかを描いた。この絵はかなり速く仕上がったよ。
  ボールペンで下描きして水彩とウォッシュ(下注参照)で仕上げをした。だから完成に時間がかかったのは描画のほうじゃないんだ。

 (注):ウォッシュ…絵の上に薄い色をさっと塗る技法。絵全体の色調を整える効果がある。余談だが、ぎゃざの表紙を描いていた田中久仁彦氏はこの手法をよく使っている。


 左側は《ネクロポーテンス/Necropotence(5E)》のための初期のコンセプトスケッチだ。右は最終的にカードになったスケッチである。


 ヴァクター:それがなんとか形になったことに満足していますか?
 テディーン:ああ、確かに! 実はこの絵をさらに広げて服装の残りをDuelist誌の記事(訳注:The Duelist#11の39ページとか)のためにデザインしたんだ。頭部から始めてクリーチャーに仕上げていくのはなかなか面白かったな。


 ヴァクター:《ネクロポーテンス/Necropotence(5E)》が今まで刷られたなかでも最も強力なカードの一枚であるということは決して悪いことじゃないと思いますが。
 テディーン:うん。みんなに毎回スケッチを頼まれる絵のひとつだね。でも俺は彼を絶対に同じように描かないから、こいつが一番だな。




 ヴァクター:では次にこれを見てください…

 《Chaos Orb(UN)》


 テディーン:ああ、《Chaos Orb(UN)》! これは元々「みなごろしの球」と呼ばれてて、それがこいつがどんなことをするのかヒントを与えてくれた。俺は8ページか9ページくらいスケッチや即興のアイデアを描かなきゃならなかった。
  そこから広がりをもつ一番いいものを選び出したわけだ。(スケッチの1つの)これは、もともと思いついたサムネイル画像に非常によく似てる。絵の中には文様が描かれた球体とかもあるよ。ほかにはそこから黒い稲妻が出てたりね。
  映画からインスピレーションを得たのかもしれないけど、「未来惑星ザルドス(訳注:そういう映画があるそうです)」は見てないからな。
  それに空飛ぶデカ頭が出てくるみたいだけどさ。それはそれとして、俺は頭をひねったのさ「空飛ぶデカ頭があんたにできる最悪のことはなんだろう?」で、溶岩のかたまりをだばだば吐くのを最初に思いついた。お、いいじゃん、ゲロ溶岩! 兵士が戦場で見たいとも思わないようなやつだよな。こいつは水彩と色鉛筆だけでかなり速く描けたよ。




 《ヨハン/Johan(CH)》


 《ヨハン/Johan(CH)》の予備のスケッチである。
 ヴァクター:(《ヨハン/Johan(CH)》を取り出して)レジェンズのための指示というのは、大勢のレジェンドを描くというだけの指示だったのですか?
 テディーン:彼ら(訳注:ウィザーズ社)は、こういう記憶に残る英雄か悪役の人物が欲しかったんだろうな。以前のセットにはそういうのって多くはなかったと思うし。


 ヴァクター:あなたはその目的を達成したと思われますか?
 テディーン:そう思ってるよ。いくつかのカードはホント思い出深いね。大勢のアーティストが面白いモノを作り出してるよ。


 ヴァクター:《ヨハン》についてほかには?
 テディーン:時々このカードのスケッチを頼まれたときには、俺は彼の手にライトセイバーを持たせてるんだ。願わくば、最近出版された本を見た人たちがヨハンのことをダース・モール(訳注:スター・ウォーズ エピソード1の悪役のヒトね)の真似だと思わないで欲しいな。そうじゃなくてまったく逆なんだからな!


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Mark Tedin

基本セット
 《防御の光網/Defense Grid(8ED)》
 《超大なベイロス/Enormous Baloth(8ED)》
 《ファイレクシアの巨像/Phyrexian Colossus(8ED)》
 《次元の門/Planar Portal(8ED)》
 《テレパシー/Telepathy(7E)》
 《ファイレクシアの巨像/Phyrexian Colossus(7E)》
 Braingeyser(UN-3E)
 Chaos Orb(UN)
 《赤の防御円/Circle of Protection: Red(UN-6E)》
 《火の玉/Fireball(UN-5E)》
 《チャザックの兜/Helm of Chatzuk(5E)》
 《ジェイムデー秘本/Jayemdae Tome(6E)》
 《奈落の王/Lord of the Pit(UN-5E)》
 《魔力の櫃/Mana Vault(UN-5E)》
 《ネビニラルの円盤/Nevinyrral's Disk(UN-5E)》
 Sol Ring(UN-3E)
 Time Vault(UN)
 Timetwister(UN)
 《剣の壁/Wall of Swords(UN-4E)》
 《木の壁/Wall of Wood(UN-4E)》
 《冬の宝珠/Winter Orb(UN-5E)》
 《森の宝球/Wooden Sphere(UN-4E)》

神河ブロック
 《手の檻/Cage of Hands(CHK)》
 《死呪いの大峨/Deathcurse Ogre(CHK)》
 《古の法の神/Kami of Ancient Law(CHK)》
 《ねじれた鏡映の神/Kami of Twisted Reflection(CHK)》
 《溶岩の撃ち込み/Lava Spike(CHK)》
 《天羅至の掌握/Terashi's Grasp(BOK)》

ミラディンブロック
 《島/Island(MRD-291)》
 《日々を食うもの/Eater of Days(DST)》
 《起源室/Genesis Chamber(DST)》
 《マイアのマトリックス/Myr Matrix(DST)》
 《創造の標/Beacon of Creation(5DN)》
 《合成ゴーレム/Composite Golem(5DN)》
 《倍化の立方体/Doubling Cube(5DN)》

オンスロートブロック
 《突進する石背獣/Charging Slateback(ONS)》
 《草原の十字軍/Grassland Crusader(ONS)》
 《名も無き者/Nameless One(ONS)》
 《流水の長魚/Slipstream Eel(ONS)》
 《死体の収穫者/Corpse Harvester(LGN)》
 《超大なベイロス/Enormous Baloth(LGN)》
 《忘れられた古霊/Forgotten Ancient(SCG)》
 《混沌の掌握/Grip of Chaos(SCG)》
 《ワイアウッドの守護者/Wirewood Guardian(SCG)》

オデッセイブロック
 《灰燼の火獣/Ashen Firebeast(OD)》
 《勇敢な行為/Gallantry(OD)》
 《石灰石のゴーレム/Limestone Golem(OD)》
 《悔悟せる吸血鬼/Repentant Vampire(OD)》
 《むら気な天使/Wayward Angel(OD)》
 《蛮族ののけ者/Barbarian Outcast(TO)》
 《復讐に燃えた夢/Vengeful Dreams(TO)》
 《怒鳴りつけ/Browbeat(JU)》
 《罪を与えるもの/Guiltfeeder(JU)》
 《切除するもの/Scalpelexis(JU)》
 《不実な人狼/Treacherous Werewolf(JU)》

インベイジョンブロック
 《慈悲の天使/Angel of Mercy(IN)》
 《解体の一撃/Dismantling Blow(IN)》
 《次元の門/Planar Portal(IN)》
 《焦熱の溶岩/Scorching Lava(IN)》
 《堕落した者アーテイ/Ertai, the Corrupted(PS)》
 《ファイレクシアの吸血兵/Phyrexian Bloodstock(PS)》
 《飛翔艦ウェザーライト/Skyship Weatherlight(PS)》
 《熱烈な突撃/Fervent Charge(AP)》
 《生体飛行船/Living Airship(AP)》
 《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager(AP)》

マスクスブロック
 《戦闘飛翔艇隊/Battle Squadron(MM)》
 《落盤/Cave-In(MM)》
 《パンゴザウルス/Pangosaur(MM)》
 《ひずみの壁/Wall of Distortion(MM)》
 《ベルベイの門/Belbe's Portal(NE)》
 《旗艦プレデター/Predator, Flagship(NE)》
 《ラースの悪鬼/Rathi Fiend(NE)》
 《ルートウォーターの猛士/Rootwater Commando(NE)》
 《キマイラ像/Chimeric Idol(PR)》
 《縫い目のゾンビ/Whipstitched Zombie(PR)》

ウルザブロック
 《内骨格器/Endoskeleton(UZ)》
 《起動砦/Mobile Fort(UZ)》
 《ファイレクシアの巨像/Phyrexian Colossus(UZ)》
 《再処理/Reprocess(UZ)》
 《薄煙の火口/Smoldering Crater(UZ)》
 《防御の光網/Defense Grid(UL)》
 《無慈悲/No Mercy(UL)》
 《ファイレクシアの堕落者/Phyrexian Debaser(UL)》
 《ギックスの指輪/Ring of Gix(UL)》
 《セカンド・チャンス/Second Chance(UL)》
 《押し出し成形機械/Extruder(UD)》
 《ケルドのチャンピオン/Keldon Champion(UD)》

ミラージュブロック
 《深淵の門番/Abyssal Gatekeeper(WL)》

アイスエイジブロック
 Balduvian Conjurer(IA)
 Force Void(IA)
 Freyalise's Wind(IA)
 Glaciers(IA)
 《応急手当/Heal(5E)》
 《精神のほころび/Mind Ravel(5E)》
 Nacre Talisman(IA)
 Naked Singularity(IA)
 《ネクロポーテンス/Necropotence(5E)》
 Polar Kraken(IA)
 Stench of Evil(IA)
 Thoughtleech(IA)
 Death Spark(AL)
 Phantasmal Sphere(AL)
 Phyrexian Boon(AL)
 Phyrexian Devourer(AL)
 Thought Lash(AL)
 《上天の嵐/AEther Storm(5E)》
 《記憶の欠落/Memory Lapse(5-6E)》
 Retribution(HL)
 《拷問/Torture(5E)》

アンティキティ
 《アシュノッドの人体改造器/Ashnod's Transmogrant(AQ,5E,CH)》
 《フェルドンの杖/Feldon's Cane(AQ,5E,CH)》
 Priest of Yawgmoth(AQ)
 《テトラバス/Tetravus(AQ,4E)》
 《ウルザの魔力炉/Urza's Power Plant(AQ,5E,CH)》

アラビアン・ナイト
 《アラジンのランプ/Aladdin's Lamp(AN,3-4E)》
 《サイクロン/Cyclone(CH)》
 《空飛ぶ絨毯/Flying Carpet(3-4E)》
 Juzam Djinn(AN)
 《真鍮の都/City of Brass(CH)》

ザ・ダーク
 《火の兄弟/Brothers of Fire(5E)》
 Curse Artifact(DK)
 Dark Sphere(DK)
 《ゴブリンの勇士/Goblin Hero(DK)》
 《リバイアサン/Leviathan(5E)》
 《魔力激突/Mana Clash(5E)》
 《精神爆弾/Mind Bomb(5E)》
 Psychic Allergy(DK)

レジェンズ
 《繭/Cocoon(CH)》
 《忌まわしき者/Abomination(4E)》
 Horror of Horrors(LE)
 《ヨハン/Johan(CH)》
 Lifeblood(LE)
 Lord Magnus(LE)
 Mana Drain(LE)
 Mana Matrix(LE)
 《再誕/Rebirth(4E)》
 《赤の魔力貯蔵器/Red Mana Battery(4E)》
 《毒蛇製造器/Serpent Generator(4E)》

フォールン・エンパイア
 Deep Spawn(FE)
 Delif's Cone(FE)
 Delif's Cube(FE)
 Homarid(FE)
 《精神攪乱スラル/Mindstab Thrull(5E)》
 《オークの隊長/Orcish Captain(5E)》
 Thorn Thallid(FE)

ポータル・セカンドエイジ
 《夜魔のエンジン/Nightstalker Engine(P02)》
 《蒸気カタパルト/Steam Catapult(P02)》
 《蒸気フリゲート艦/Steam Frigate(P02)》
 《タラスの飛行船/Talas Air Ship(P02)》

スターター・セット
 Grim Tutor
 Cinder Storm

アングルード
 《Chaos Confetti(UG)》
 《Volrath's Motion Sensor(UG)》

アンヒンジド
 《ネクロインポーテンス/Necro-Impotence(UNH)》
 《アートの防御円/Circle of Protection: Art(UNH)》アリーナバージョン

プロモ・カード
 Mana Crypt

ヴァンガード
 Greven il-Vec(V2)
 Urza(V4)

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c 1995-2002 Wizards of the Coast, Inc., a subsidiary of Hasbro, Inc. All Rights Reserved.
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 (この翻訳はよりマジックの理解を深めるための手助けを目的としたものであり、権利者に被害を与える目的ではないことを明言しておきます。)
 (ソース:http://www.wizards.com/default.asp?x=mtgcom/feature/103

 #大御所の一人、テディーン氏の語り口は本当にフランクで楽しかったです。訳し難くもあるんですが、言いたいことはだいたい伝わってるんじゃないかなと。小難しいことはあまり言ってないですが、独自のスタイルを確立するための哲学を持っていることは文中で語られています。
  また、彼は早描きであり、Duelist誌のインタビューでは《ネビニラルの円盤/Nevinyrral's Disk(5E)》を6時間(!)で仕上げたという逸話もあります。サイン会でスケッチを頼んだ人はその片鱗を見ることができるのではないでしょうか。