ビハインド・ザ・カンバス 2003年02月04日
画家アーニー・スウェケル氏と二人の子供たちの写真。
彼は芸術家が持ちうる素晴らしい資産、すなわち創造力と自分の作品への愛を持っている。アーニー・スウェケルにとって、その二つはどちらも正しい場所にあるのだ。
若い頃のアーニー氏は熱烈なSFファンでありゲーマーで、モンスターや、エイリアンや、そのほかのファンタジーに必要不可欠な要素を発展させていった。大部分の独学のアーティストのように、広告アートと同じぐらい、マジックやその他のゲームや出版物で、自分がSFやファンタジーでお熱なモノの、驚くべき象徴的な絵を創り出すことで生活することが可能だったのだ。
アーニー氏はつねづねアートに対して関心を持ってはいたが、人生のあとあとになるまで仕事の機会と見てはいなかったという。
「オレは鉛筆を持つことができるようになったときからずーっとクリーチャーとかを描いてたんだけどね、27歳になるまでは、それで実際に生活してはいなかったよ」
彼は美術学校に行くことで技術を得ようとした。だが、二学期制学校はアーニー氏に興味を失わせるに過ぎなかったのだった。
「教え方がつまんないんだよな。オレは美術学校に半年通ったんだけどさ、それでイヤになっちゃったのさ。バッカだよなーオレも。もっと残って行程を実践したり勉強すりゃよかったのに。オレが独学だって言うとすげーって思うかもしんないけどさ、実際のとこ、学校に残ってたほうがいいって気付いてそのとおりにしてりゃ、オレの人生もうちっと楽だったかもしんないよ」
にもかかわらず、アーニー氏は非常に成功したアーティストになることができた。それも教室では得ることのできない実戦の経験の積み重ねがあるからだろう。
「切り捨ててきた仕事、奇妙な場所、生きてきたなかで出会った人たち、そういったもの全てが、言うなれば学校の外で学んだオレのアートの教育みたいなもんだな。それぞれの状況、出会った人たち、訪れた場所が、絵や書くものに影響を与えるんだ。ライターとアーティストってのは人生すべてが勉強なんだな。見るもの、すること、そして経験したことがその仕事に反映されるのさ」
彼のアート、特にファンタジージャンルへの興味は決して衰えてはいなかった。しかし彼は自分の絵ではうまくいかないかもしれないと感じており、その業界に関係することをためらったのだった。
「オレのマブダチと家族はオレの作品をずっとTSR(D&Dを出版していた会社。1997年にウィザーズ・オブ・ザ・コースト社に吸収合併)やヘヴィーメタルとかの出版社に送らせようとしてたんだ。オレは自分がそこまで上手いとは思ってなかった。オレはたくさんの独創的な人間が同じように思ってるとわかってはいるけど。君らも自分がそこに入りたいと思う業界の人の作品を誉めてたら、自分の作品は絶対に無理だと思いこんじゃうようになってしまうかもしれないぜ」
それははっきりと結論が出た。アーニー氏は望む場所で仕事をするのに十分上手かったのだ。
「29のときにTSRとケイオシウムにサンプルの作品を送ったんだ。次の週には仕事を貰えたよ。おっかしなことにさ、オレが18のときに描いた絵が全部好きだったんだってさ。てことは、オレは11年間も拒絶して怖がってたってわけ。アーティストになる教訓として、君がなにかの一部分になりたいと思ってて、ちょっと愛想良くして話を持ちかけるだけ十分な賢くなって、そういう人たちにそうして問い合わせて欲しいね。待ってるだけじゃダメだ。オレみたいにな。オレは10年じゃなく21年この仕事をやれてたはずなんだ」
ではアーニー氏を奮起させるものとは何だろう?
「本当のことを今から言うからチェックしろよ! ハハ、ごめん。 実は、大画家の作品をいつもオレは注目しちゃうんだ。去年オーストラリアにいたとき、オリジナルのミケランジェロ、ルーベンス、デューラー、ダ・ヴィンチを見て来たんだ。オレが生きてる限り、あれは忘れないよ」
それとは対照的に、アーニー氏は現代のメディアにおけるファンタジー・アートからも多くを学び取っている。
「オレはビデオゲームや映画のために作られたクリーチャーとかにワクワクするね。アーティストとして、存在しない場所や時間における環境・クリーチャー、あるいは服装とか乗り物とかを考えるように言われるときが大好きだね。そのすべてがスクリーン上で働くときが最高なのさ! 今もちょうどそういうのをちょこっと描いてるんだ」
彼が子供のときとは少々動機は変わってきている。だが最終的な結論は常に何らかの方法で積極的であったということだ。
「高校と大学に行ってた頃は、オレは女の子の気を引くために絵を描いてるって言っただろうな。オレってアーティストなんだぜって言うのは傷つくようなことじゃないし。今なら、自分が好きなことを行うことでお金が入るというだけでなく、常に変化する何かによって自分の家族を養うこともできると言おうかな。オレが描く作品すべてがすべて以前描いていたようなものじゃない。すべてが挑戦で驚きなんだ。オレは世界中で一番幸運な男だよ」
(ミケランジェロ…絵画・彫刻・建築家「システィナ礼拝堂の天井画」「ダビデ像」等)
(ルーベンス…宗教画家「十字架降架」等)
(デューラー…画家「祈る手」「四使徒」等)
(ダ・ヴィンチ…説明の必要があるかな?画家・発明家・医学力学など多才な人物「モナ・リザ」「最後の晩餐」等)
スウェケル氏にサインしてもらった何枚かのコモンだ…《沈泥を這うもの/Silt
Crawler(PR)》、《カルデラのカヴー/Caldera Kavu(PS)》、《アクアミーバ/Aquamoeba(TO)》
アーニー氏のマジックの作品のもうひとつの面白い面は、ある1枚(《ごまかし/Hoodwink(MM)》)以外すべての作品が、一部コンピューターを使って創られているということだ。これで《焦熱の火猫/Blistering
Firecat(ONS)》の例に見られるようなシビレる視覚効果を創りだして、アーニー氏は作品をいっそう効率よく作り出せるようになった。
「オレは鉛筆描きを取り込んで、絵を油彩で描いたみたいに塗るんだ。そいつを水彩用紙にプリントアウトして、仕上げにちょっと水彩と色鉛筆を描き加える。これはスタイルの合併って奴じゃないかなと思うんだ。このスタイルの一番有益な特徴としてはスピードだな。昔ながらの油彩でオレが一枚描きあげるのにかかる時間で3枚のカードを描くことができる。このスタイルをオレは"伝統デジタル"と呼んでる」
コンピュータはアートの"純粋さ"をなにもかも奪い去ってしまうといった批判については?
「オレにそういった"それは本当のアートなのか?"って説教してきたアーティストたちみんな全員、今じゃコンピュータ上で実際に仕事をしてるぜ。スピードの便利さとスタイルの多用さはホントすごいんだ。これを要約すると、こうさ、このデジタル上で仕事をするってことはアーティストにとってまた別のメディアなんだってこと。たくさんのマジックのアーティストがデジタルで仕事をしてるけど知らないだろ? 皆が油彩や水彩で塗っているみたいに独特のスタイルを持っているからな。単に自分の知識を手近にある道具に応用するだけさ」
もちろん、アーニー氏のサイエンスフィクションへの執着心はファンタジージャンルの中の作品でも上手く変換されている。
「まあ、サイエンスフィクションとファンタジーが仲良く手ェ繋いでオレの頭の中に入ってるのさ。オレはいつでもそのテのやつが大好きだったんだけど、子供の頃にはぜんぜん手に入れられなかったんだ。小さいときに図書館の地下で見せてもらったコミックと古臭い映画がクールなやつだったかな。ウチの白黒テレビは3つしかチャンネルがなくて、観たり聴いたりできるビデオゲームやDVDは一つもなかったんだ。
そういうわけで、オレのイマジネーションはほんの時折もたらされるサイエンスフィクションやファンタジーのちょっとしたニュースを食べて育ったんだ。よっぽどそういうのが好きかそれについてうまくやらないといけなかったけどな」
けれども、そういうものはある意味有害であるのはないですか?
「ぃやいや。ちょっとした現実逃避なんか誰も傷つけやしないだろ。奥さんはオレにレイア姫みたいに着飾らせられるのは好きじゃないって言うけどさ。オレはそっちのほうが有害だと思うね。でもなあ、自分の奥さんをたまーにウーキー(後注)みたいに着膨れさせたとして、どうやって傷つけるっていうんだ?」
(ウーキー:スター・ウォーズのチューバッカの種族。けむくじゃら。)
マジックの仕事に関わっている限りは、アーニー氏は旅行できる役得と、大きなイベントで世界中の自分みたいなゲーマーに会えることを楽しんでいるのだ。
「コイツは素晴らしいゲームというだけじゃない、キモは世界に広がっているということでもある。オレが愛してやまないことではあるけれども、一番ステキなことはカードを創っていることじゃなく、一番クールなのは世界中の人たちに会うチャンスが貰えたここ数年間だ。彼らに共通している1つのこと、 そう、マジックさ。 オレは合衆国で育って、今現在ヨーロッパに数回、アジアには2回行った。オレはゲーマーってのはどの国でもやっぱゲーマーなんだなってわかったよ」
彼にとって、マジックのゲームは文化の違いを越える共通の言語なのだろう。
「マジックの素晴らしいところはさ、見えるものじゃないにしてもそれが国境を持たないことだよ。誰でもプレイできるし、誰も拒まない。マジックのカードにサインしに行っている間に、信じられないほどクールな人に会ったし、素晴らしい友達をつくったよ。世界って本当はかなり小さいんだなとか思ったよ。初めて会う人とマジックをするとき、自分達のカードは違う言語なんだけれど、オレたちはお互いにそれを完璧に理解できる」
そのとおり、アーニー氏は君達のようにデッキをシャッフルしてちょっとゲームをするのが好きなのだ。不幸なことに、彼の仕事の責務は彼が遊ぶのをより難しくしているが。
「オレは週に2回くらいプレイしたもんさ。それが今じゃ2週に1回だ。今現在、オレは新しくフルタイムの仕事を始めたところでね、家族もいるしさ。だから、オレのカード全部売らなきゃならないかもとか心配なんだ」
彼は好きなフォーマットはあるのだろうか?
「あるよ。タイプ1でプレイするのが大好きなんだよ! オレはキラー・クレリックデッキを作ってたんだけど。アホみたいな名前に見えるだろうけど、でもこいつは多くのプレイヤーを殺ってるんだぜ。あとフォイルのエルフデッキもあったけど、サインドのカヴーデッキにやられてから崩しちゃったな。俺がもっと遊ぶ時間があったらなあと祈っててくれよ。オレの子供たちが十分大きくなったら、彼女たちにゲームを教えてそのときに再開しようと思ってるんだ」
興味深いことには、アーニー氏はマジックの仕事をする位置についたためにゲームを始めたのだという。
「オレはメルカディアン・マスクスから始めたんだ。オレは何年もD&Dの仕事をしてて、ある日、マジックで何か描いてみる気はあるかって聞かれたんだ。何のことかさっぱりだったよ! 地元のカードショップに行っていくつかゲームしてるのを見てみたんだ。すぐ気に入ったね! ゲームの持つ戦略性と競争性の世界にオレはすぐにトリコになった。オレはすぐさま電話を返して、その一員になりたいですって伝えたんだ。ホントホント、D&Dのアートディレクターには感謝してるよ。マジックのアートディレクターである彼女の提案でオレを呼んでくれないかってことだったんだってさ」
アーニー氏のお気に入りのマジックの作品は、定義されていない領域を彼が模索することができる作品だという。
「オレが一番好きなのは、ゲームに出てきておらず誰も見たことがないようなクリーチャーを創り出すことさ。オレの絵だけでなくデザインも同じように見せられるからね。《藪跳ねアヌーリッド/Anurid
Brushhopper(JU)》《森の力/Sylvan Might(OD)》《激浪の多相の戦士/Riptide Shapeshifter(ONS)》《飛びかかる虎/Springing
Tiger(OD)》《思考をかじるもの/Thought Nibbler(OD)》みたいな作品がそうだな。《血たぎるドワーフ/Dwarven Bloodboiler(JU)》は好きだな。実はオレ穴掘りドワーフだし。オレが一番胸を張れる作品があるんだけど、次のいくつかのセットのためのやつだからまだ出せないんだ。オレがそうしているようにそいつらを掘り当てて欲しいね」
アート解説:これはクリーチャー・カードで、水から作られた無定形のクリーチャーで形や容姿を変えることができるように見えること。『アビス』に出てきたクリーチャーと思ってくれればよい。
すぐさま、アーニー氏は私から受け取ったコピーのアート解説の抜けている部分を指摘した。
「基本的に、夜中に海から上がってきた、水から作られたクリーチャーを作るように言われたんだ。君がそれについて考えるとしたら、何を見せる?」
これが、最終稿に満足しなかったアーニー氏が描き起こした他の要素と組み合わせたものだ。
「《アクアミーバ/Aquamoeba(TO)》について言及するのは面白いだろうな。オレが描いたすべてのカードのなかで、印刷されたものからまだ印刷されてないやつも含めてだ、オレは《アクアミーバ/Aquamoeba(TO)》のイラストが一番嫌いなんだ。こいつはアーティストとしての個人的なモノだけどさ。いつだってどのアーティストにも1つくらい嫌いな絵や話をしないほうがマシなやつもあるさ。これはオカシイんだ、オレはいつもこいつのイラストを入れて欲しいって言われるんだけど、でもオレ描かないからね。オレ本ンッ当にこれが嫌いなんだってば。でもカード自体は好きだよ。何度となくそのギミックを使ったりしたし」
これは、アーニー氏側の努力の欠如によるもののように思えるかもしれないがそうではない。
「一枚のカードはたいていスケッチに3時間、彩色に8時間から12時間くらいはかかるんだけど、こいつは18時間かかったんだ。なんでかもわからない。だから、オレはこれが嫌いなんだ」
サイエンスフィクション狂いとして、彼はインスピレーションを得るために『アビス』を見ようとしたのだろうか?
「見てないよ。実際インスピレーションのために映画を見るように言われるなんてうんざりだ。オレは以前に一度もされたことのないことをやりたいんだよ」
もしもう一度チャンスをもらえたなら、アーニー氏はこの青のマッドネスの出入り口たるカードを大きく異なった外見にするだろう。
「オレは頭のてっぺんから足の先までコイツを塗り直すね。まったく新しい見地をとって、そしてたぶんもっと薄い明かりをふんだんに色を使って描くだろうな」
アート解説:場所…ヤヴィマヤ 直立したディンゴリザードで、15インチの重厚なするどい背骨を持ち、素早い前足で、10インチのファイレクシア人を砕き引き裂いている。
明らかに、この作品のためのガイドラインは他のものより厳しかった。しかしアーニー氏はそれを少しねじ曲げて、彼と、プレイヤーたちと、R&D(研究開発)チームを喜ばせる何かを作り出すことを成し遂げたのだった。
「えーっと。本当のことを言うと、解説をかなり変えているんだ。普通はそんなことしないんだけど、アートディレクターと話をしていたとき、彼はオレに、もし最も小さい種類ではないならば、こいつは恐らくレッサー・カヴーの一種なんじゃないかと言ったんだ。それで、プレイヤーの立場でオレはコイツが際立つような何かをしたいとマジに思った。オレはワクワクしながら、コイツがオレに怒って吠えないように願った。
オレはファイレクシア人をデザインに加えるつもりだったけど、そうするとこのカヴーの本当の大きさがバレてしまう。ということでオレはソレを抜かすことにした。運良く、こいつはスケッチをどんどん進ませてくれて、彩色し始めるのにも十分好みだった。みんなこれが気に入ってくれた。そう、マジックのカードを描くことは名誉なんだ。でもプレリカードにされることはもっとスゴイことだ。最近、サインプレゼント用に200枚のプレリカードを受け取ったよ。サインするのは、11歳以下の子にだけだぜ」
最終的に出来上がった作品は、カードの素早さ、インスタント速度で唱えることができて速攻を持っているメカニックに合致した姿勢で目前に迫るカヴーとなった。
「何かに対して主な焦点を当てたいときは、暖色の明るい色をイラストに入れることで前面に押し出すことができる。寒色の青は対象物を距離をおいて奥においやる。2次元の絵だけれど、この理論を使うことで上手くいったね」
クリーチャーがバッと飛び掛っている状態を表すものとして、アーニー氏は動いている感じを出すために地面にホコリを舞わせた。
「洞窟の中はホコリまみれじゃないだろうけど、そういうとこはもっとじめじめしてるもんだよな。まあでもこれで動こうとしているか、ちょっと何かしているように見せることはできた」
全体から見ると、《怒り狂うカヴー/Raging Kavu(IN)》についてのアーニー氏の感情は《アクアミーバ/Aquamoeba(TO)》の正反対である。
「ひとつも変えないだろうね。オレはそれがそうあるモノを、そして誇れるものを掘り当てたんだ。これはオレが過去数年間に描いた絵の気に入った数少ないものの1つさ」
アート解説:色…赤
場所…スカーク峠
動作・・・巨大で獰猛に見える突進してくる火猫(詳細は《パーディック山の火猫/Pardic Firecat(OD)》を参照)
中心…火猫
雰囲気…アクション
備考…燃えているのではなく、火から作られたものである
これまでこのコラムにお付き合い頂いている読者たちには、このアート解説が過去に使われたフォーマットと異なっていることに気がつくはずだ。場所、動き、ムードなどがより詳細な説明を創り上げるために書かれている。
「オレは彼らがどうやってこの解説を考えついたのか考えこんだりしたことないし、疑問に思ったこともない。おおかたアート・ディレクターかR&Dのヒトがやってるんじゃないかな、あえて言っちゃうけどさ、R&Dの人間ってオカシイよな。自分たちが毎回全部のセットを作らなきゃいけないなんて想像つくかい? それだけじゃなく、オレがマジックで働くきっかけになったあのアートディレクターもスゴイよな。まったくスゴイ人たちさ」
この割り当てはユニークだった。アーニー氏が「燃えている」のではなく「火から作られた」クリーチャーを創る仕事を任されたのだ。これが作り出すことが難しい大きな違いの鍵である。
「確かにかなり難しいな。でもオレの解決法はいたって簡単な逃げ道だった。オレはこれまでに作られた他のすべてのクリーチャーを見た。オレのお気に入りはグレン・アンガスが描いた雄牛《長角火獣/Longhorn
Firebeast(TO)》と《パーディック山の火猫/Pardic Firecat(OD)》の二つなんだ。でも、オレは何か新しい何かをしたかった。それで、オレは火山から生まれたやつで、新しいやつでなおかつ面白いものに見えるにはどうするか考えた。そこでオレはそれが火ではなくマグマで作られているように見えるようにすることにした」
《パーディック山の火猫》はアート解説でも言及されている。そしてアーニー氏はそれを良いスタート地点として使うことにした。
「《パーディック山の火猫》はホント素晴らしいイラストだよ。インスピレーションを得るためにこの絵を見るようにと彼らが言うのもうなずける。やれやれ、これは偉大なるアートの作品だよ。まさに完成させるのも難しい"燃えているのではなく火によって作られた"ナニモノかを描いた真髄のイラストさ」
この作品を本当に際立たせているのは煙の効果である。それは確かに多くのプレイヤーの注意を引きつけている。
「オレはコンピュータで作業したんだ。そう言うと簡単そうに見えるけど、コイツがかなり難しかったんだ。コンピュータで小さな煙の領域を作って、煙が沸き起こっているように見えるまでそれをひたすら複製して、陰影をつけたり削ったりしたんだぜ。フォトショップのツールで作った輝きと火を、あちこち明度を加えて、燃え立つ雲みたいに見えるように狙って作りこんだんだ」
この作品のもうひとつ面白い面は、背景がないこと。それとこの鉤爪はこのクリーチャーのほかの部分より暗いということだ。
「オレはこのクリーチャーの顔と鉤爪をもうちょっと際立たせたかったんだ。またまた、これらは作品の中で君らが想像できるのと同じくらい大きいのだという遠近感を出すこと以外何もしてないんだよな」
《アクアミーバ/Aquamoeba(TO)》でそうだったように、アーニー氏は《焦熱の火猫/Blistering Firecat(ONS)》に完全に満足してはいないのだ。
「オレはこの獣の実際の体より煙の部分はいい仕事をしたと思うよ。オレにとっては、ケバケバしくてアラが目立つんだ。それがこの絵のプリントもそんなに数を持っていない理由さ。もしもう一度やれるなら、確実に鉤爪と顔について、よりそれらを写実的リアルになるようにやり直すだろうね。そうできたなら、きっともっと似合うだろうな」
* * *
少し前に、アーニー氏はウィスコンシン州マディソンに引っ越した。そこで彼は妻と二人の子供たちと2匹の猫とともに生活している。彼はマジックの作品とは別に多くの仕事をしている。
「オレはケイオシスムのクールな仲間と一緒にペンドラゴンのクールなやつで仕事を始めたんだ。そのあと、TSRやウィザーズ・オブ・ザ・コースト社のやつを山ほどやって、アポフィス・コンソーシアム、トイヴォールト、シエラ、ミドル・アースで絵を描いた。広告モノも山ほどやったな。最近のやつでオレがワクワクしてるのは、D&D、ハリー・ポッター、一番最近にドラゴン・マガジンの表紙用に描いたやつの"ダ・ヴィンチ"様式のイラスト全部かな。もうすぐ出ると思うよ」
さらに、アーニー氏はレイヴン・ソフトウェアで新しい仕事をはじめた。
「あれはソルジャー・オブ・フォーチュンやジェダイ・ナイト1、2とか、ほかのやつみたいなベストセラー・ゲームもかすむと思う。ほんとスゴイんだ!オレが手に入れることができるものはおおかた何もかもコンセプト・アーティストとして働いてるな。オレがしていることを毎日君たちが注目しててくれたら有難いな。クウェイク4がやっと出るけど、そいつは世界中に嵐をもたらすぜ!今までに見たことないだろうようなやつをさ!」
あなたは3月のプロツアー・ヴェニスでアーニー氏にサインを頼むことがあるだろうか? …《アクアミーバ/Aquamoeba(TO)》にだけはサインを欲しいと頼まないように。
Arnie Swekel Card Gallery
第7版
《堕天使/Fallen Angel(7E)》
《濃霧/Fog(7E)》
《ゴブリンの略奪者/Goblin Raider(7E)》
《虚ろの犬/Hollow Dogs(7E)》
オンスロートブロック
《焦熱の火猫/Blistering Firecat(ONS)》
《貪欲なるベイロス/Ravenous Baloth(ONS)》
《激浪の多相の戦士/Riptide Shapeshifter(ONS)》
《そびえ立つベイロス/Towering Baloth(ONS)》
《暴れまわるマーロドント/Berserk Murlodont(LGN)》
《激浪の刻み獣/Riptide Mangler(LGN)》
オデッセイブロック
《集中/Concentrate(OD)》(合作)
《消えないこだま/Haunting Echoes(OD)》
《脈動する幻影/Pulsating Illusion(OD)》
《飛びかかる虎/Springing Tiger(OD)》
《森の力/Sylvan Might(OD)》
《思考をかじるもの/Thought Nibbler(OD)》
《墓火/Tombfire(OD)》
《沼/Swamp(OD-340)》
《アクアミーバ/Aquamoeba(TO)》
《ハイドロモルフのカモメ/Hydromorph Gull(TO)》
《よろめく大群/Shambling Swarm(TO)》
《藪跳ねアヌーリッド/Anurid Brushhopper(JU)》
《血たぎるドワーフ/Dwarven Bloodboiler(JU)》
《幻影のニショーバ/Phantom Nishoba(JU)》
《縫合/Stitch Together(JU)》
インベイジョンブロック
《鎧を着た守護者/Armored Guardian(IN)》
《たわむか折れるか/Bend or Break(IN)》
《クローシスの従者/Crosis's Attendant(IN)》
《ひずんだ航跡/Distorting Wake(IN)》
《爆発的成長/Explosive Growth(IN)》
《稲妻の矢/Lightning Dart(IN)》
《メタスランのゾンビ/Metathran Zombie(IN)》
《怒り狂うカヴー/Raging Kavu(IN)》
《ヨーグモスの行動計画/Yawgmoth's Agenda(IN)》
《カルデラのカヴー/Caldera Kavu(PS)》
《ドラルヌの十字軍/Dralnu's Crusade(PS)》
《内破/Implode(PS)》
《ミラーウッド・ツリーフォーク/Mirrorwood Treefolk(PS)》
《憑依の天使/Haunted Angel(AP)》
《ラッカの信奉者/Raka Disciple(AP)》
マスクスブロック
《銃眼付きの壁/Crenellated Wall(MM)》
《二重の造物/Dual Nature(PR)》
《大イモムシ/Giant Caterpillar(MM)》
《ごまかし/Hoodwink(MM)》
《カイレンのオモチャ/Kyren Toy(MM)》
《溶岩獣の兵卒/Laccolith Grunt(NE)》
《要塞の飛行船/Stronghold Zeppelin(NE)》
《棺の操り人形/Coffin Puppets(PR)》
《沈泥を這うもの/Silt Crawler(PR)》
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(この翻訳はよりマジックの理解を深めるための手助けを目的としたものであり、権利者に被害を与える目的ではないことを明言しておきます。)
(ソース:http://www.wizards.com/default.asp?x=mtgcom/feature/126)
#理論派アーニー・スウェケル氏の登場です。なんというか話し方が実直で訳しやすかったです。イラストレーターにはいくつかパターンというか流派みたいなものがあって、感覚(フィーリング)で描く人と理論から描く人がいます。アーニー氏は後者の典型とでも言いますか、ダ・ヴィンチやミケランジェロ大好きというところからもそれがうかがい知れます。
また、理論派は説教も大好きで、自分の手法をとにかく理論で説明したがったり教訓を話したがります(笑)なんだか人生相談している気分になって翻訳していましたよ・・・あと、グレン氏をベタぼめしていますが、《集中/Concentrate(OD)》で合作していることと何か関係があるんでしょうか。そこらへんも聞いてみたかったですね。