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 ビハインド・ザ・カンバス 2003年4月10日

 カンバスの後ろ側: ドネイト・ジァンコラ
 古典絵画の巨匠とマジックの融合

 byトビー・ヴァクター


 古典絵画とファンタジー・アートを混ぜ合わせるとしたら、あなたはどうするだろうか?

 レンブラント(注1)と《シヴ山のドラゴン/Shivan Dragon(7E)》とはありそうな組み合わせには見えないが、ドネイト・ジァンコラ氏にとってはそれが上手くいっているのだ。多くのプレイヤーが、ドネイト氏が言うところの「古典-要約-写実主義」スタイルによって、同時代の人々の中でも際立っている彼の作品に注目しているのだ。

 もし、あなたが今までに《シッセイの指輪/Sisay's Ring(VI)》《苔色のダイアモンド/Moss Diamond(MI)》《栄光/Glory(JU)》の原画を注意深く見たことがあるなら、彼のスタイルに敬意を表さずにはいられないだろう。

(注1)オランダ出身の肖像画家レンブラント・ファン・レイン(1606-69)。「目を潰されるサムソン」「笑う自画像」等。



 多くのマジックのアーティストと同じく、ジァンコラ氏のアートへの興味は、発展途上の自身の創造力を使ってファンタジージャンルに没頭していた子供時代から始まった。
 「僕の絵の仕事のなかでマイルストーンはあるけど、僕が厳密に絵を描き'始めた'ときってのを正確に言うことはできないよ。

  僕の子供の頃は一日中プラモやオモチャ作ったり、戦車や宇宙船とかいろいろ絵を描いたりマンガを読んだり絵を真似したり、ダンジョンズ&ドラゴンズの鉛のフィギュアに色つけたり、ロールプレイ用(注2)にマップやアイテムの絵を描いたり、学校の美術の課題を作ったりしてた記憶しかないなあ」

 彼は違う職に就こうとしていたのだが、自分の能力や才能がそれでは十分に発揮できないと思い、アートに戻ってきたのだという。
 「アートは情熱だったね。けれども常に趣味でもあったんだ。僕の正式な絵の訓練は遅くてさ、UVM(ヴァーモント大学のこと)で電気工学専攻で大学に入ったのはいいけど、想像力の抜け落ちたクラス、科目、課題に不満を感じて、その職の道を辞めちゃったから、ヴァーモントの大学には2年といなかったんだ。

 僕はまだ、学期のど真ん中に工学クラスを3つ辞めた日を覚えてるよ。友達や家族を驚かせたし、自分自身もショックだった。適切な(ものわかりのいい)大人の監督なしでこんなことしちゃいけないね。そんなことしたら人生棒に振るよ!」

(注2)日本で言うテーブルトークRPGのこと。主にD&Dだったようだ。



 職業の進む先を変える事は一大事だが、それはやり遂げることや改善することとは違ったものである。
 「次の学期に、アートコースに登録した。まさに最初の、絵を描く正式なレッスンはもう始まってたんだけど、その年に、僕は油彩の最初の作品、何点かの恐ろしい絵を作り上げて、自分には指導が必要だと実感したんだ−−−たくさんの指導がね!

  絵を描くことを真剣にやるためには、競争心の強い仲間ともっと挑戦的な芸術大学での教育についていく必要があることが僕にはすぐに判った。1989年の秋に(注3)シラクス大学に入って、ファインアート(注4)描画を専攻した。

  シラクスで僕に開かれたドアは、理解しがたいものだと思えた−−−色の理論から構成、解剖学、ペイントテクニック、実験的な図画、ポストモダン的、あるいは近代的で抽象的な理論を立てるなんてことが」

 つまりこれは、天性の才能がアートの世界で重要であるのに対し、教育や忍耐力や努力でもそうできることを示すために行っているのだろう。
 「僕が神から与えられた才能を持ってるなんて誰も言わなかったし、自分の絵にアリザリン・クリムゾン(注5)のつや出し油彩を最適に塗るやりかたを理解するために従事していた時間も誰も知らないだろ。
  練習、練習、ただ練習。
  作る、作る、ひたすら作る。
  それがあの学校で学んだ一番大きなレッスンかな。
  芸術は完璧にはなりえない。だから次の絵、次の構想に移り続けなきゃならないんだ。

  結局、大学生活は6年続いた。でもそれはよかったよ。僕は一番好きなことができて−−−毎日が自分の子供時代をやり直してるようで! これで全部言い切っちゃったけど、僕の訓練は1992年に卒業してから止まったわけじゃあないよ」

(注3)アメリカの新学期は秋から始まる。
(注4)コマーシャルアートと対をなす、芸術的な意図を持った美術。
(注5)赤色顔料の名前。



 確かに、教室で芸術を学ぶのは一つの手だ。しかし"実社会"というのはまったく違った状況なのだ。
 「92年の秋に、世界中で一番大きなアートの現場に近いということで、ニューヨークに引っ越したんだ。サイエンス・フィクションやファンタジーの分野に特化したブックカバー・イラストレーターの仕事を探した。これは大きな飛躍だった。

  けれどひとつも依頼が来ないまま数ヶ月が過ぎ、しかもニューヨーク・シティは住むには安い場所じゃない。僕は、'規則的な'仕事に就く誘惑に我慢しながら、イラストレーターの社会でパート・タイムで働くことで、あと両親(僕は頭がオカシイんじゃないかと思われてた)から金を借りることでかろうじて自活していたんだ。

 自由な時間はすべて、'ポテンシャル'エージェントの指導のもとでイラストサンプルを描いたり、博物館に行ったり、ほかのイラストレーターや画家を調べたり、絵画教室やアートの会合に顔を出したりして過ごした。そのうち僕はある2人の野望に満ちたアーティストたちと小さなアパートをシェアで借りることにして、毎日8〜10時間くらい絵を描いていたよ」

 そしてついに、ジァンコラ氏は仕事を見つける。最もよく知られているクラシックないくつかのフィクション小説用のカバー・イラストを描く仕事を始めたのだ。
 「努力は3冊のクラシックなサイエンスフィクション本のカバーを創る依頼で最終的に実を結んだ−−−H・G・ウェルズの"タイム・マシン"、マーク・トウェインの"アーサー王とコネチカット・ヤンキー"(注6)、ジュール・ヴェルヌの"地底旅行"。 そのときから、仕事のないフリーランスのイラストレーターとして暇を潰すことはなかったよ」

(注6)未訳。



 ジァンコラ氏の背景、教育、関心は、古典芸術へ強く収束している。このインスピレーションは彼の仕事を形づくる役に立っており、そしてそれは君たちが開けるブースターから出てくる何枚かのカードに反映されている。
 「僕にとって、絵を描くことについて一番重要な問題は印刷されたイメージじゃなく、そのおおもとの作品を理解したとき、その人が取り払うものなんだ。
  僕はメトロポリタン美術館、フリック博物館、モダンアート美術館のような素晴らしい博物館の近くにいたいからニューヨークに引っ越した。今でも午後は大好きな芸術家を見に行って過ごすことが多い−−−メムリンク、ファン・エイク、ベラスケス、カラヴァッジョ、フェルメール、モンドリアン、レンブラント。そういう人達の複雑さを理解して、僕の作品に持って来ようと頑張ってるんだ。
  ベラスケスの幅16フィート、高さ10フィートの完全な等身大の図画の巨大さの前に立つこと以上に、僕が感激することはないよ!(実際僕はそれを見るためにスペインのプラド博物館までお参りしてきたんだ) それ例外には、ファン・エイクの8インチ×12インチの小さなやつの細かな詳細部分をじーっと眺めて長い時間を過ごしてるだろうね。ガラスに鼻をくっつけて、ほとんど目にも見えない細部を見ようと頑張るよ」

 興味深いことに、この古典芸術の影響は、じっさいにジァンコラ氏のマジックの作品のいくつかに現れているのだ。
 「それは古典の美学と近代的な抽象概念への僕の愛との組合わせで、僕が自分の絵の中に一つの芸術様式に混ぜ合わせようとしているんだ。僕のイラストの中にそういった影響を見つけることができるよ。たとえば、オデッセイにある女性の《地図作り/Cartographer(OD)》や男の《守護ウィザード/Patron Wizard(OD)》は、ロレンツォ・ロットの肖像画(16世紀のイタリアのルネッサンス画家)から思いついたんだ」

 ハンス・メムリンク(1430/35-94)。宗教画家。
 ヤン・ファン・エイク(1390-1441)。宮廷画家として肖像画を多数描く。油絵具を改良しヨーロッパに広める。
 ベラスケス、ディエゴ(1599-1660)。宮廷画家。
 カラヴァッジョ(1573-1610)。ルネッサンスの影響から抜け出し新しいスタイルを切り開いた人物。
 フェルメール(1632-75)。カラヴァッジョ、レンブラントと同時代に、彼らとは違った穏やかな光の使い方をした画家。
 ピエト・モンドリアン(1872-1944)。キュビズムに影響を受け、幾何学的な抽象風景を描く。
 ロット、ロレンツォ(1480-1556)。宗教画家。



 当然のことながら、古典的なスタイルとマジックの宇宙を合わせることは、潜在的に問題をいくつか生み出すおそれがある。しかし、ジァンコラ氏は、それぞれの世界が共存できることを保証するために特に気をつけていることがある。
 彼はマジックの世界の人間の見地に焦点を置くことを目指し、それにより作品に深みが増すのだ。
 「ここでの大きな挑戦は、僕のイメージをマジックやモンスターで独占させないようにすること。
  特殊効果はクールだけど、僕は人物を描いたり、それぞれのキャラクターの後ろにある精神面を分析する方が大好きなんだ。僕はアーティファクト(僕にとっては静物画)やキャラクターのカード(こういうのは肖像画)が好きだからね。

  それは3つの別々のサイエンスフィクション映画を観ているようなものさ。
  1つめは効果について。それは次のクールな効果が現れる時への興味を失うような計画というものは存在しない。
  2つめは何もかもが面白いイイ物語。
  3つめは(僕はそれを真似ようとしてるんだ)高い芸術作品になるために昇り、皆の印象にずっと残るような、素晴らしいキャラクターの開発と物語を支えるためのクールな効果の両方の要素を持つもの」

 ジァンコラ氏がいくら"鳴り物入り"のアプローチから遠ざかろうとしていようとも、彼はやっぱりファンタジーがもたらす自由さが好きなのだ。
 「限界がないからね。誰もドラゴンがどういう外見なのか知らないし、誰も魔法がどう働くのか知らないし、誰も別の世界がどういう景色なのか知らない。剣や衣装から建築物にいたるまで、外見を変えたり作りなおしたりするためのテーブルの上に全て乗っているんだ」

 (説)「鳴り物入り(bells and whistles)」...良い面ばかりを説明して悪い面にまったく言及しないセールスマンのことを皮肉った表現。



 マジックに関する話に移ろう。ジァンコラ氏が初めてゲームに興味を持ったのは、プレイヤーたちがどんな風にゲームやイラストを楽んでいるかを目にした時だった。
 「僕が初めてウィザーズ・オブ・ザ・コースト社のことを聞いたのは、1995年のコミックブック・コンベンションだった。ウィザーズのアーティスト、ブライヨン・ワックウィッツ(注7)が、彼が描いたイラストを何枚か見せてくれたんだ。しかもサインを求めるプレイヤーたちで手一杯だった。
  ゲームの絵を描くことの創作的な可能性に感銘を受けたのもそうだけど、もっと重要なのは、僕もサインをねだられるような絵を描きたいと思ったことさ!(注8)
  でもブックカバーを描く仕事を増やしてたところで、ウィザーズ社にポートフォリオ(注9)を送るのに6ヶ月も過ぎちゃったんだ。 スー・アン・ハーキーさんっていうアートディレクターが、丁寧に、しかも誉めてくれて、カバー・イラストのポートフォリオを見てすぐに来たるべきミラージュ拡張セット用に4枚の依頼が来たんだ。
  こんな機会を持ってすごく嬉しかったよ」

 決まった場所の仕事を持って、ジァンコラ氏は、彼の仕事が一流であることを保つために一層の努力をすることを決意した。
 「これらのカードの絵の品質を、自分の中でも高水準のものにしようと決めたんだ。数々のアフリカの文化についての本を何冊か買い足して、次に、ウィザーズ社が望むイメージに近づけるために文化の標本を広い範囲で取って、東アフリカの民族衣装と宝飾のデザインや様式を研究し始めたんだ。
  頑張って作り上げたこれらの最初の作品、《にやにや笑いのトーテム像/Grinning Totem(MI)》、《琥珀の牢/Amber Prison(MI)》、《村の古老/Village Elder(MI)》、《苔色のダイアモンド/Moss Diamond(MI)》を誇りに思うし、これが達成した成功でわくわくしたんだ」

 彼が個人的に気に入っているマジックの作品は《シッセイの指輪/Sisay's Ring(VI)》だという。
 「《シッセイの指輪》に詰め込んだ多くの要因が、僕にとってそれを特別なものにしているんだ。(顔と同じように個人について言及するものと見なしている)手のひらがあって、地図に対する僕の愛が込められてて、作品が古典絵画のような雰囲気があるだろ。

  実を言うと、この手のひらは、ここブルックリンから1ブロック下ったところに住んでる機械工の友達のものなんだ。いつも僕は、絵にモデルとして僕の知り合いの誰かを使おうとしてるんだ」

 (注7)《Kjeldoran Escort(AL)》 《低木林地/Brushland(IA)》など。
 (注8)ココハワラウトコロデス
 (注9)紙ばさみ、つまり何点かイラストを綴じたものを送付したということ。後述に「cover illustration[s]」とある。



 ジァンコラ氏はちょっとだけマジックをやってみたことはあるが、心はロールプレイヤーなのだ。

 「僕が遊んだのは1年ぐらい前、ビジョンズ、ウェザーライト、テンペストのあたりだね。でも僕のロールプレイヤーとしての歴史はマジックなんか及ばないよ。 あ、失敬。
  えー、大勢のプレイヤーが展開させていく長いキャンペーンシナリオのロールプレイが好きだね。僕が創るアートによく似てるから。僕は物語が好きなんだ!」

 それでも、彼は全世界のマジック・プレイヤーたちと接点を感じるのだという。

 「マジックから得られる大きなプレッシャーは、百万人の人に知られていて、それだけの人々が僕の絵を見て、楽しんでいるということだね。僕もゲーマーだから、たくさんの他のプレイヤーたちと一緒に楽しみを共有することが好きなんだ」



 《シヴ山のドラゴン/Shivan Dragon(7E)》

 アート解説:飛びながら火を噴く恐ろしい《シヴ山のドラゴン/Shivan Dragon(7E)》。

 シヴ山地にいるこの王者のドラゴンは、マジックのゲームを象徴するクリーチャーの一番の筆頭だろう。アルファの頃から、後のマジックのカードによく見られる種族だ。
 新規のプレイヤーは《炎のブレス/Firebreathing(6E)》を内蔵した化け物に恐れおののくだろうし、それを優しく眺めている古参の人間は《Black Lotus(UN)》よりも(5/5)飛行クリーチャーのほうが良かったときもあったなあと思い起こすこともあるだろう。(注10)
 では、このようなカードがやり直されるとき、何が起こるのだろうか?

 「《シヴ山のドラゴン》の注文は夢のような計画だった。僕は何のアート解説も貰わなかったし。あるのは古いカードとアート・ディレクターの一言'クールにお願いね!'だけ。
  望むところさ! 他の人が普通にやるような追随のしかたはしないから、別のアーティストの絵の再解釈は僕にとっては何の問題もないんだ」

(注10)トビー、それ誉めすぎ。



 それでも、ジァンコラ氏はオリジナルの作品を念頭に置いていたという。
 「同じカードなんだから、僕の《シヴ山のドラゴン》もメリッサ・ベンソンさんの絵に賛同していたかった。でも自分なりのものにしなきゃいけない。あと皆が注目するカードだから、絵をいつもの仕事のサイズの2倍にして、いつもの3倍くらい手間をかけて描いたんだ。

  何百万ものプレイヤーが新しい《シヴ山のドラゴン》に対して何を思うかについては心配はしていなかった。ただ僕にとって一番美しく、最高のドラゴンを作る必要があった。 自分の中の評論家(注11)を満足させることができたなら、きっと他の皆も好きになってくれるだろうと踏んでいた。自分の能力の最高のものをファンの人たちに贈りたかったんだ。僕が絵を描いてきたすべての働きがそれに通じるんだ」

 総合的に、完成した作品が成功だったと宣言するのは問題ないだろう。
 「受けもよかったみたいで、ウィザーズ社はパッケージ・アートからプラスチックの箱までいたるところにこの絵を使ってくれたよ。描きなおせって言われても、元の絵をさらに大きくするくらいで、何も変えないよ!」

(注11)中の人がいるそうです。MIBみたいに頭がコクピットなのかしらん。



 《守護ウィザード/Patron Wizard(OD)》

 アート解説:このカードは青のカードで、魔術師学校の校長に見えるようにすること。賢く、老いた人間の校長である。マスターに焦点を当て、それを伝えられるような所に置くこと。

 この作品において、ジァンコラ氏は自分の古典絵画の影響をマジックの世界に注ぎ込む完璧な機会を得た。
 「《守護ウィザード/Patron Wizard(OD)》は描き上げるにはとても面白い注文だった。異国のキャラクターとして人物の肖像画を描くチャンスを得たんだ。
  それがもともとのアート解説のタイトルで一覧にあった'魔術師の王'ってやつさ。僕は、座っている人物をヨーロッパの北ルネッサンスまでさかのぼって正式な肖像画の古典的な感じで描こうと思っていた。こういったイメージは永遠を表すもので、僕がこの作品に求める品質そのものだったからね」

 アート解説は、ジァンコラ氏に彼のしっくりくる一番良いやりかたでキャラクターを創る自由を与えるのには、いたって一般的なものだった。
 「僕が好きな方法でもある、こういった注文の開放性は、僕らしさをこの絵の中に入れることができるものなんだ。モデルは簡単に見つけたーーー向かいの通りに住んでるお隣さんだ。70歳くらいで、尊敬したくなるような、そしてはかり知れない賢明さを持つ深くくぼんだ目をした立派な人なんだ」

 ウィザードの絵に、特に目の上に影が多くあることに注目してほしい。これは面白い効果を作りだしている。
 「最終稿で彼の目のくぼみを暗いままにしておいたことで、ウィザードをちょっと意地悪く感じさせるのが狙いさ。どこを見ているかわからない。君たちよりも有利な立場に彼はいるんだ」

 ジァンコラ氏は、部族の作品で彼独自の解釈を作りだし、宝石類と鎧にとても力を入れた。
 「この作品の形式上の技術的な面で、背景に椅子を作って、この人物に伴う宝石類について自分の水面下でのモチーフを作った。彼の肩にいるタコから触手までね。これらはアフリカ風の作品から思いついたものなんだーーー単純で、原始的で、力強い。
  人物を世俗的でないように思わせるために、僕自身の世界から異国的なデザインを引き出すのが気に入ってて、この無数のイヤリングは、僕の参考文献のなかの人物から同じように思いついたものなんだ。このリングを階級章か戦士の戦装束のように見せたかったーーーこれらは年齢、経験、生きる知恵を表しているんだ」

 色の要素は、事物を一様に引き締めることに使われている。
 「色相環(注12)へは単純なアプローチをすることで全体の成分は統一されてる。これは共通の基礎色としてどちらも青色を持っているから、背景を緑と紫にしたんだ」

 全体としては、ジァンコラ氏はこの作品に非常に満足しているという。
 「もし全部やり直すとしても、僕なりの構成や色の選択とか、一つの要素も変えることなんて考えつかないね。このカードが気に入ってるんだ!」

 (注12)Color Wheel(色相環)...ニュートンのスペクトルを基に分散された色(色相)を赤から青紫まで自然な流れで配列したもの、つまり虹色の順番で円環状に並べたもの。 黄みの赤・緑・青紫の「色光三原色」や、シアン(青緑)・マゼンタ(赤紫)・イエロー(黄)の「色料三原色」などの原色定義を基本とし、異なる色彩理論とともに表現することができる。


* * *


 それ以外のアートが関係しているところでは、ジァンコラ氏は非常に多作であり、彼が描いたすべてを一覧にするだけで完全に別の記事ができてしまう。
 「質問を逆にしてさ、僕がやったことのない仕事を聞いたほうが早いよーーーだって数百ものブックカバー、ゲームカバー、雑誌カバー、あとプレイボーイ(注13)の挿絵、ナショナルジオグラフィック(注14)の挿絵、ハズブロの挿絵、スター・ウォーズの広告、肖像画、個人的な注文、ギャラリー・ワークとか、いろいろやってるからね」

 彼は現在ニューヨークのブルックリンに、妻と娘と三人で住んでいる。また二人目の女の子が二月に生まれるそうだ。 http://www.donatoart.com/magic.htmlの彼のウェッブサイトをチェックしてほしい。

 (注13)たぶん間違い無く一般的な成人向け雑誌。ドキドキ。
 (注14)ナショナル・ジオグラフィック協会が発行する旅行誌。非常に美しい写真で構成されている。


Donato Giancola Card Gallery

基本セット
 《文書管理人/Archivist(7E)》
 《フェロッズの封印/Feroz's Ban(7E)》
 《ジェラードの知恵/Gerrard's Wisdom(7E)》
 《ジェイムデー秘本/Jayemdae Tome(7E)》
 《速やかな反応/Reflexes(7E)》
 《シヴ山のドラゴン/Shivan Dragon(7E)》
 《テフェリーの細工箱/Teferi's Puzzle Box(7E)》
 《ヨーグモスの勅令/Yawgmoth's Edict(7E)》
 《水晶のロッド/Crystal Rod(5-6E)》
 《フィンドホーンの古老/Fyndhorn Elder(5E)》
 《鉄の星/Iron Star(5-6E)》
 《象牙の杯/Ivory Cup(5-6E)》
 《骨の玉座/Throne of Bone(5-6E)》
 《休戦/Truce(5E)》
 《森の宝球/Wooden Sphere(5-6E)》

オンスロートブロック
 なし

オデッセイブロック
 《地図作り/Cartographer(OD)》
 《ミラーリ/Mirari(OD)》
 《守護ウィザード/Patron Wizard(OD)》
 《陰謀団の外科医/Cabal Surgeon(TO)》
 《燃えたつ計略/Flaming Gambit(TO)》
 《栄光/Glory(JU)》

インベイジョンブロック
 《大釜のダンス/Cauldron Dance(IN)》
 《底ざらい/Dredge(IN)》
 《脊髄支配/Spinal Embrace(IN)》
 《虎目石のカメオ/Tigereye Cameo(IN)》
 《トロールの角のカメオ/Troll-Horn Cameo(IN)》
 《終末の死霊/Doomsday Specter(PS)》
 《マナの大鉢/Mana Cylix(PS)》
 《星のコンパス/Star Compass(PS)》
 《クロウマト/Cromat(AP)》

マスクスブロック
 《凶眼のトカゲ/Deathgazer(MM)》
 《溶岩渡り/Lava Runner(MM)》
 《万能薬/Panacea(MM)》
 《有徳の古老/Revered Elder(MM)》
 《森/Forest(MM-347)》
 《浮嚢/Air Bladder(NE)》
 《預言する妖術使い/Divining Witch(NE)》
 《ショークーの工作員/Agent of Shauku(PR)》
 《胞子カエル/Spore Frog(PR)》
 《沈める原野/Sunken Field(PR)》

ウルザブロック
 《反目/Antagonism(UZ)》
 《刻印/Brand(UZ)》
 《水晶のチャイム/Crystal Chimes(UZ)》
 《解呪/Disenchant(UZ)》
 《溶融/Meltdown(UZ)》
 《聖域の守護者/Sanctum Guardian(UZ)》
 《スクラップ/Scrap(UZ)》
 《島/Island(UZ-335)》
 《島/Island(UZ-336)》
 《島/Island(UZ-337)》
 《島/Island(UZ-338)》
 《狂気の瀬戸際/Brink of Madness(UL)》
 《記憶の壷/Memory Jar(UL)》
 《雑兵の群れ/Rank and File(UL)》
 《荒残/Rack and Ruin(UL)》
 《塩水の予見者/Brine Seer(UD)》
 《燃えがらの予見者/Cinder Seer(UD)》
 《キヅタの予見者/Ivy Seer(UD)》
 《ジャスミンの予見者/Jasmine Seer(UD)》
 《ベラドンナの予見者/Nightshade Seer(UD)》

テンペスト
 《放逐/Dismiss(TE)》
 《エコー室/Echo Chamber(TE)》
 《精油のボトル/Essence Bottle(TE)》
 《大荒れ/Havoc(TE)》
 《焚きつけ/Kindle(TE)》
 《自然の反乱/Nature's Revolt(TE)》
 《オアリムの祈り/Orim's Prayer(TE)》
 《炎の波/Flame Wave(SH)》
 《侵入警報/Intruder Alarm(SH)》
 《偏頭痛/Megrim(SH)》
 《破壊的脈動/Shattering Pulse(EX)》
 《スカイシェイパー/Skyshaper(EX)》

ミラージュブロック
 《琥珀の牢/Amber Prison(6E,MI)》
 《にやにや笑いのトーテム像/Grinning Totem(6E,MI)》
 《苔色のダイアモンド/Moss Diamond(6E,MI)》
 《村の古老/Village Elder(MI)》
 《泡のお守り/Juju Bubble(VI)》
 《シッセイの指輪/Sisay's Ring(VI)》
 《平和の番人/Peacekeeper(WL)》
 《鋼のゴーレム/Steel Golem(WL)》
 《スランの秘本/Thran Tome(WL)》

ポータルほか
 《聖なる騎士/Sacred Knight(PO)》
 《漆黒のドラゴン/Ebon Dragon(PO)》
 Starke / スターク(V4)
 Tawnos / タウノス(V4)

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 (この翻訳はよりマジックの理解を深めるための手助けを目的としたものであり、権利者に被害を与える目的ではないことを明言しておきます。)
 (ソース:http://www.wizards.com/default.asp?x=mtgcom/feature/144)


 #古典絵画が大好き努力家肌、オタク画家のドネイト氏です。絵に対しての関心は高く、完成度の高い作品で知られています。あまり知らなかった方ももう一度よく見直してみてください。《にやにや笑いのトーテム像/Grinning Totem(MI)》なんかイイ表情してるから、印象に残っている人も多いのでは?
 《水晶のチャイム/Crystal Chimes(UZ)》の光のつけかたや、5版のラッキーチャーム5種とカメオ、《泡のお守り/Juju Bubble(VI)》等に見られるデザインセンスは素晴らしいの一言です。
 予見者シリーズのバックの模様、《炎の波/Flame Wave(SH)》でサーフィンしている人影など、遊び心もある楽しい人です。
 ですがオンスロートブロックにその名前を見ることができません。スカージでは登場するんでしょうか?
 余談ですが、公式のビハカンではカードギャラリーに2枚抜けがありました。